令和7年4月5日(土)に「令和7年度総会・研修会」が実施されました。

研修会では、講師に小松 裕 先生(国立スポーツ科学センター所長特別補佐)をお迎えし、「大会現場におけるスポーツドクターの役割と心得」という演題で講演いただきました。
小松先生は、「スポーツドクターは選手を支える黒子でありながら、現場の中核を担う存在」であると強調されました。技術的知識だけではなく、対応力・人間力・信頼構築力が必要不可欠であり、スポーツ医療を通じて社会全体の健康向上に寄与することの意義を、数々の実体験とともに伝えてくださいました。

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小松 裕氏
国立スポーツ科学センター所長特別補佐
小松 裕氏

日時
令和7年4月5日(土)15:30〜17:00
会場
長野赤十字病院 南新棟2階 第1研修ホール
講師
小松 裕 先生(国立スポーツ科学センター所長特別補佐)
演題
「大会現場におけるスポーツドクターの役割と心得」

講演の概要

小松裕先生は、30年以上にわたり国内外の大会でスポーツドクターとして活躍してこられた豊富な実体験をもとに、「スポーツドクターとしての役割と心得」について多角的に講演されました。以下、講演内容の主なポイントです。

  1. 国際大会での経験と気づき
    • 1994年アトランタ五輪から、ソフトボールや野球を含む50回以上の国際大会に関与
    • オリンピック選手団への帯同では、開会式における裏方の苦労や選手のコンディション管理の大切さを痛感
    • スポーツ現場では医学知識に加え、柔軟な対応力と現場対応力が求められる
  2. サポート体制の構築と現場支援
    • ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)の概要とその進化
    • 近年では、パリ五輪での「ミニHPSC(選手村外サポート拠点)」の整備に関与
    • コンディショニングスペース、栄養管理、リラックススペース、トレーニング環境、洗濯設備など、選手の「生活の質」も重視した包括的支援が重要
    • パラリンピックでは遅れていた支援体制を改善すべく尽力
  3. スポーツドクターに求められる資質と姿勢
    • 裏方としての自覚 : チームの一員であり役割を理解する。控えめに振る舞うこと。最高のコンディションで練習・試合に臨むためのお手伝いをする
    • 柔軟性と対応力 : 内科医でも外科的処置を求められる現場がある。何でもできる覚悟が必要
    • 信頼関係の構築 : 選手・監督・スタッフとの信頼がすべての基本
    • 公平性 : 「誰と話すか」も見られている。偏りのない対応を意識。
    • 応援も意味のある形で : 医師が戦術的発言をしてはいけない
    • 不安を煽らない : 「大丈夫」と言える安心感を与える存在であること
    • 受け入れる力の支援 : 怪我や不調に直面した選手が前を向けるようなサポートを
  4. 一流選手から学ぶ姿勢
    • 一流選手ほど感謝の気持ちがあり、謙虚で努力を惜しまない
    • 結果ではなく「自分の全力を出せたか」を大事にする
    • ストレスやプレッシャーの中で、自律神経の乱れや不安を抱える選手を「みんなあること」と共感で支える
  5. スポーツ医学のこれから
    • スポーツはメダル獲得だけでなく、「国民の健康」に貢献するもの
    • HPSCのスローガン「ハイパフォーマンスからライフパフォーマンス」への転換
    • スポーツ医療を通じた社会貢献への視点を常に持つこと